2027年3月から、OTC医薬品との代替性が特に高い一部の医療用医薬品について、「一部保険外療養」という新しい仕組みが始まる予定です。
対象薬が処方された場合、保険診療そのものが使えなくなるわけではありません。診察や調剤などは保険診療を維持しながら、対象となる薬剤費の一部を「特別の料金」として患者が追加で支払う制度です。
この記事では、2026年9月時点の厚生労働省資料を基に、制度の概要、対象薬、対象となる患者、負担額、負担の対象外となるケース、医療機関から薬局までの流れを薬剤師が分かりやすく解説します。
最終更新:2026年9月16日
制度の細部は、今後の告示・通知などで変更される可能性があります。
OTC類似薬の一部保険外療養とは?
OTC類似薬とは、一般に、市販薬と同じ成分または類似した成分を含む医療用医薬品を指す言葉です。ただし、「OTC類似薬」には法律上の統一された定義があるわけではありません。
今回の制度では、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品を中心に、代替性が特に高い77成分、約1,100品目が対象候補として整理されています。
制度の目的は、医療用医薬品の処方を受ける人と、市販薬を自費で購入する人との公平性を確保すること、現役世代を中心とした保険料負担の上昇を抑えることです。
重要:この制度は、対象薬をすべて保険適用外にするものでも、受診せず市販薬だけで対応するよう一律に求めるものでもありません。必要な診察を受けた結果、対象薬が処方される場合に、薬剤費の一部を追加で負担する仕組みです。
いつから始まる予定?
厚生労働省の資料では、2027年3月の実施が想定されています。健康保険法等の改正法は2026年5月29日に成立し、同年6月5日に公布されました。
2026年9月時点では、療養担当規則・薬担規則、処方箋への記載、レセプト上の取扱いなど、医療機関と薬局で必要になる運用の具体化が進められています。
OTC類似薬の対象77成分一覧
厚生労働省が示した対象候補は77成分、約1,100品目です。以下は、2026年8月1日時点の公式資料を基に、成分を主な用途別に整理した一覧です。番号は厚生労働省資料の掲載順です。
注意:一覧に成分名があっても、処方された薬が必ず追加負担になるとは限りません。投与経路、1日最大用量、効能・効果、患者の年齢や病状、長期使用の医学的必要性などを医師・薬剤師が確認します。商品名だけで自己判断せず、お薬手帳を持って相談してください。
用途別の内訳:抗感染症薬5成分/抗アレルギー・鼻炎薬11成分/ビタミン・栄養関連4成分/鎮痛・消炎薬10成分/抗真菌薬6成分/殺菌・消毒薬12成分/胃腸・便秘薬7成分/かぜ・呼吸器薬2成分/皮膚用薬12成分/口腔・眼科用薬3成分/その他5成分
抗ウイルス薬・抗生物質など(5成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 1 | アシクロビル | 抗ウイルス薬 |
| 16 | オキシテトラサイクリン塩酸塩・ヒドロコルチゾン | 抗生物質・副腎皮質ホルモン配合剤 |
| 21 | クロラムフェニコール | 抗生物質 |
| 22 | クロラムフェニコール・フラジオマイシン硫酸塩・プレドニゾロン | 抗生物質 |
| 49 | ビダラビン | 抗ウイルス薬 |
抗アレルギー薬・鼻炎薬(11成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 2 | アシタザノラスト水和物 | 抗アレルギー薬 |
| 12 | エピナスチン塩酸塩 | 抗アレルギー薬 |
| 14 | 塩酸テトラヒドロゾリン・プレドニゾロン | 点鼻用血管収縮剤 |
| 24 | ケトチフェンフマル酸塩 | 抗アレルギー薬 |
| 51 | フェキソフェナジン塩酸塩 | 抗アレルギー薬 |
| 52 | フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン | 抗アレルギー薬 |
| 58 | フルチカゾンプロピオン酸エステル | ステロイド |
| 63 | ベポタスチンベシル酸塩 | 抗アレルギー薬 |
| 64 | ペミロラストカリウム | 抗アレルギー薬 |
| 73 | モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物 | アレルギー性鼻炎治療薬 |
| 77 | ロラタジン | 抗アレルギー薬 |
ビタミン・栄養関連(4成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 3 | アスコルビン酸 | ビタミン剤 |
| 38 | 沈降炭酸カルシウム・コレカルシフェロール・炭酸マグネシウム | カルシウム配合剤 |
| 42 | トコフェロール酢酸エステル | ビタミン剤 |
| 56 | ブドウ酒 | 滋養強壮薬 |
鎮痛・消炎薬(10成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 4 | アンモニア水 | 鎮痛鎮痒収斂消炎剤 |
| 8 | イブプロフェン | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
| 9 | イブプロフェンピコノール | 非ステロイド系消炎鎮痛剤 |
| 10 | インドメタシン | 鎮痛消炎剤 |
| 27 | サリチル酸メチル・dl-カンフル・トウガラシエキス | 鎮痛消炎剤 |
| 28 | サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル | 鎮痛消炎剤 |
| 29 | サリチル酸メチル・l-メントール・dl-カンフル・グリチルレチン酸 | 鎮痛消炎剤 |
| 33 | ジクロフェナクナトリウム | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
| 53 | フェルビナク | 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) |
| 76 | ロキソプロフェンナトリウム水和物 | 解熱消炎鎮痛剤 |
抗真菌薬(6成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 5 | イソコナゾール硝酸塩 | 抗真菌薬 |
| 15 | オキシコナゾール硝酸塩 | 抗真菌薬 |
| 20 | クロトリマゾール | 抗真菌薬 |
| 41 | テルビナフィン塩酸塩 | 抗真菌薬 |
| 54 | ブテナフィン塩酸塩 | 抗真菌薬 |
| 71 | ミコナゾール硝酸塩 | 抗真菌薬 |
殺菌・消毒薬(12成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 6 | イソプロパノール | 殺菌消毒剤 |
| 11 | エタノール | 殺菌消毒剤 |
| 17 | オキシドール | 殺菌消毒剤 |
| 19 | 希ヨードチンキ | 殺菌消毒剤 |
| 23 | クロルヘキシジングルコン酸塩 | 殺菌消毒剤 |
| 32 | 次亜塩素酸ナトリウム | 殺菌消毒剤 |
| 34 | 消毒用エタノール | 殺菌消毒剤 |
| 66 | ベンザルコニウム塩化物 | 殺菌消毒剤 |
| 68 | ホウ酸 | 眼洗浄・消毒薬 |
| 69 | ポビドンヨード | 殺菌消毒剤 |
| 72 | 無水エタノール | 殺菌消毒剤 |
| 74 | ヨウ素 | 殺菌消毒剤 |
胃腸薬・便秘薬(7成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 7 | イトプリド塩酸塩 | 胃薬 |
| 30 | 酸化マグネシウム | 制酸・緩下剤 |
| 37 | 炭酸水素ナトリウム | 胃腸薬 |
| 47 | ピコスルファートナトリウム水和物 | 緩下剤 |
| 48 | ビサコジル | 便秘薬 |
| 65 | ベルベリン塩化物水和物・ゲンノショウコエキス | 止瀉剤 |
| 70 | マルツエキス | 乳幼児用便秘薬 |
かぜ・呼吸器薬(2成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 13 | L-カルボシステイン | 去痰薬 |
| 25 | サリチルアミド・アセトアミノフェン・無水カフェイン・プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 | 総合感冒剤 |
皮膚用薬(12成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 18 | オリブ油 | 皮膚保護剤 |
| 26 | サリチル酸 | 寄生性皮膚疾患剤 |
| 31 | 酸化亜鉛 | 収れん・消炎・保護剤 |
| 39 | チンク油 | 消炎薬 |
| 40 | デキサメタゾン | ステロイド |
| 44 | 尿素 | 皮膚軟化剤 |
| 45 | 白色ワセリン | 軟膏基剤 |
| 50 | ヒドロコルチゾン酪酸エステル | ステロイド |
| 59 | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | ステロイド |
| 60 | ベタメタゾン吉草酸エステル | ステロイド |
| 61 | ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩 | ステロイド |
| 62 | ヘパリン類似物質 | 血行促進・皮膚保湿剤 |
口腔・眼科用薬(3成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 43 | トリアムシノロンアセトニド | 口内炎・舌炎薬 |
| 55 | 複方ヨード・グリセリン | 口腔用殺菌消毒剤 |
| 67 | ホウ砂 | 眼科用剤 |
その他(5成分)
| No. | 有効成分 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 35 | 静脈血管叢エキス | 痔治療薬 |
| 36 | 精製水 | 溶解剤 |
| 46 | ハチミツ | 矯味剤 |
| 57 | フラボキサート塩酸塩 | 頻尿・残尿感薬 |
| 75 | ラメルテオン | 睡眠導入剤 |
出典:厚生労働省「別途の負担の対象となる医療用医薬品の成分一覧(77成分)」令和8年8月1日時点。ポリエンホスファチジルコリンが削除され、ラメルテオンが追加されています。
あわせて読みたい:制度見直しの経緯と基本的な考え方はOTC類似薬の保険給付見直しとは?、市販薬の区分はOTC医薬品の第1類・第2類・第3類の違い、症状別の記事は市販薬ガイドをご覧ください。
公式の原表は、厚生労働省のOTC類似薬の一部保険外療養の実務フロー・77成分一覧で確認できます。
患者の負担はいくら増える?
基本的な枠組みでは、対象となる薬剤費の4分の1を、通常の1~3割負担とは別の「特別の料金」として支払います。残りの薬剤費には通常の自己負担割合が適用される想定です。
薬剤費が1,000円の場合の概算
| 通常の負担割合 | 現在の薬剤負担 | 新制度の概算 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 3割負担 | 300円 | 475円 | 175円 |
| 2割負担 | 200円 | 400円 | 200円 |
| 1割負担 | 100円 | 325円 | 225円 |
例えば3割負担の場合、薬剤費1,000円のうち250円が特別の料金となり、残り750円の3割である225円と合わせて、概算475円です。
※上表は制度を理解するための単純な計算例です。診察料、処方箋料、調剤基本料、薬学管理料などは別にかかります。実際の負担額、端数処理、消費税等の取扱いは施行時の正式な告示・通知と医療機関・薬局での計算をご確認ください。
どの患者が対象になる?
原則として、対象77成分に該当する医療用医薬品が、OTC医薬品でも対応できる効能・効果を目的として処方された場合に、別途負担の対象となります。
ただし、年齢、所得、病状、治療内容などへの配慮が法律上求められており、必要な医療を妨げないための対象外措置が検討されています。
別途負担の対象外となる主なケース
2026年9月に示された実務フローでは、主に次のケースを確認する流れです。
- 18歳に達する日以後、最初の3月31日までの人
- 生活保護の医療扶助を受けている人
- OTC医薬品では対応していない効能・効果に使用する場合
- がんや指定難病に関連する治療
- 公費負担医療の対象となる場合
- 処置・手術・検査に伴う14日以内の処方
- 年間を通じた服用・使用が医療上必要と医師が判断する場合
- 一部の対象成分について、妊娠中・妊娠の可能性がある人・授乳中の人
- 入院中の患者など、配慮措置に該当する場合
「病名があるだけで自動的に対象外になる」「長く使っていれば必ず免除される」という仕組みではありません。処方目的や治療の継続性を踏まえ、医師が確認します。
医療機関から薬局までの流れ
- 医療機関が対象成分を確認
処方予定の薬が対象77成分に該当するか、年齢や医療扶助などの外形的な基準を確認します。 - 医師が対象外となる事情を確認
OTCでは対応できない効能・効果、がん・指定難病、公費負担医療、長期使用の必要性などを判断します。 - 処方箋に必要事項を記載
別途負担の対象外となる場合は、その情報を処方箋やレセプトへ記載する方向で検討されています。 - 薬局が患者へ説明
対象となる場合、薬局が特別の料金と薬剤費について説明します。必要があれば医療機関へ疑義照会します。 - 患者が薬局で支払う
通常の自己負担に加え、対象薬剤費の4分の1に相当する特別の料金を支払います。
市販薬を買う制度に変わるの?
一部保険外療養になったからといって、医師が処方できなくなるわけではありません。また、症状がある人に一律で市販薬への変更を求める制度でもありません。
市販薬で対応できるかは、症状、年齢、持病、妊娠・授乳、併用薬、症状の継続期間などによって異なります。特に、症状が長引く場合、急に悪化した場合、繰り返す場合は、費用だけで判断せず医師または薬剤師へ相談してください。
患者が確認しておきたいこと
- 処方された薬が制度の対象成分か
- 今回の処方目的が別途負担の対象になるか
- 長期使用や公費負担医療などの配慮措置に該当するか
- 追加で支払う金額はいくらか
- 市販薬へ変更する場合、同じ成分・用量・効能なのか
- 併用薬や持病から見て市販薬を安全に使えるか
よくある質問
対象薬は完全に保険適用外になりますか?
いいえ。診察や調剤を含めてすべて自費になる制度ではありません。対象薬剤費の一部を保険外の特別料金として追加負担する仕組みです。
対象薬が処方されたら、誰でも負担が増えますか?
一律ではありません。年齢、医療扶助、公費負担医療、病状、処方目的、長期使用の医学的必要性などによる対象外措置があります。
市販薬の方が必ず安くなりますか?
製品価格、内容量、使用量、診察や検査の必要性によって異なります。価格だけでなく、効能・効果、成分量、併用薬との相互作用も確認してください。
高額療養費の対象になりますか?
保険外となる特別の料金は、通常の保険診療の自己負担とは取扱いが異なります。施行時の正式な案内を確認してください。
まとめ
- OTC類似薬の一部保険外療養は2027年3月の実施予定
- 対象候補は77成分、約1,100品目
- 対象薬剤費の4分の1を特別の料金として追加負担する仕組み
- 保険診療がすべて使えなくなる制度ではない
- こども、医療扶助、公費負担医療、がん・指定難病、医学的に必要な長期使用などには配慮措置がある
- 正式な対象品目や運用は、施行時の告示・通知を確認する必要がある
費用を理由に処方薬を自己判断で中止したり、市販薬へ変更したりしないでください。疑問がある場合は、処方医または薬局の薬剤師へ確認しましょう。
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参考資料
情報確認日:2026年9月16日
この記事の執筆・確認について
執筆・確認:ナカサポ(薬剤師)
薬剤師として医療現場で10年以上の実務経験があります。詳しい経歴と編集方針は運営者情報・編集方針をご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断、治療、処方、服薬指示に代わるものではありません。
