暑い日や、発熱・嘔吐・下痢が続くと、体内の水分と電解質が失われます。利尿薬、SGLT2阻害薬、下剤などを使用している方は、脱水によって副作用が出やすくなったり、持病の状態が変化したりすることがあります。一方、心不全や高血圧、糖尿病の薬を自己判断で中止することも危険です。体調不良時の対応は、主治医や薬剤師から受けている個別の指示を優先してください。
この記事のポイント
- 脱水時に注意が必要な薬と理由を確認する
- 薬は一律に自己中止せず、個別のシックデイ指示に従う
- 飲食できない、尿が極端に少ない、意識や呼吸に異常がある場合は早めに受診する
脱水とはどのような状態か
脱水は、体から失われる水分や電解質が補給量を上回った状態です。猛暑や運動だけでなく、発熱、下痢、嘔吐、食欲低下、飲水不足でも起こります。高齢者は喉の渇きを感じにくく、腎機能も低下していることがあるため、本人が気づかないうちに進行する場合があります。
強い口渇、口の乾燥、立ちくらみ、ふらつき、頭痛、強いだるさ、脈が速い、尿量の減少、濃い色の尿、急な体重減少などが手がかりです。ただし、心不全や腎臓病では体に水分がたまっていても血管内の水分が不足する場合があり、見た目だけでは判断できません。
脱水時に注意したい薬
利尿薬
利尿薬は、余分な水分やナトリウムを尿として排出し、むくみ、高血圧、心不全などを治療する薬です。ループ利尿薬、サイアザイド系利尿薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬などがあり、脱水時には血圧低下、ふらつき、腎機能の悪化、ナトリウムやカリウムの異常につながることがあります。
ただし、心不全の方が自己判断で中止すると、むくみや息苦しさが悪化する可能性があります。体重、血圧、尿量、むくみ、息切れを記録し、主治医から示された調整方法がなければ医療機関または薬局へ相談してください。
SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は、余分な糖を尿中へ排出する作用があり、糖尿病のほか、慢性心不全や慢性腎臓病に使用されることがあります。尿量が増えることで体液量が減少する場合があり、高齢者、利尿薬を併用している方、食事や水分が十分に取れない方は特に注意が必要です。
発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などで食事が取れない「シックデイ」には、休薬が必要になることがあります。日本糖尿病学会は、SGLT2阻害薬についてシックデイ時の休薬を推奨しています。ただし、糖尿病以外の目的で服用している場合や、他の薬の扱いは個人ごとに異なるため、事前に主治医の指示を確認してください。
SGLT2阻害薬では、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシスを起こすことがあります。吐き気、嘔吐、食欲低下、腹痛、過度の口渇、強い倦怠感、息苦しさ、意識の低下がある場合は、服用中の薬を伝えて直ちに医療機関を受診してください。インスリンを使用している方は、自己判断でインスリンを中止しないでください。
下剤
刺激性下剤や浸透圧性下剤などは、効き過ぎて水様便や頻回の下痢になると、水分と電解質を失う原因になります。決められた回数を超えて使用せず、下痢が続く場合は追加服用を避けて医師または薬剤師へ相談してください。便秘薬の種類によって対応が違うため、製品名や成分名を確認できるようにしておきましょう。
そのほかに確認が必要な薬
脱水時には、ACE阻害薬・ARBなどの降圧薬、メトホルミン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)なども、腎機能や体調に応じた確認が必要になる場合があります。しかし、一律に中止するのではなく、持病、検査値、併用薬を踏まえた医療者の判断が必要です。
シックデイ時に確認すること
シックデイとは、発熱、感染症、嘔吐、下痢、食欲不振などで普段どおりに食事や水分を取れない状態です。元気なときに、どの症状が出たら誰へ連絡するか、各薬をどう扱うか、血糖・血圧・体重をどの程度確認するかを書面で確認しておくと安心です。
- いつから発熱、嘔吐、下痢、食欲低下があるか
- 水分と食事をどの程度取れているか
- 尿の回数と量、尿の色
- 体重、血圧、血糖値、体温
- 服用中の薬名と最後に服用した時刻
- 息苦しさ、むくみ、強い眠気や意識の変化
水分補給の注意点
意識がはっきりしていて自力で飲める場合は、一度に大量に飲まず、少量ずつ補給します。大量の発汗、下痢、嘔吐では経口補水液が選択肢になりますが、糖分や塩分、カリウムを含むため、糖尿病、心不全、腎臓病、高血圧で水分・塩分制限を受けている方は自己判断で多量に飲まず、主治医の指示を優先してください。
スポーツドリンクは経口補水液と組成が異なり、糖分が多い製品もあります。アルコールは尿量を増やして脱水を悪化させる可能性があるため、水分補給の代わりにはなりません。
すぐに医療機関へ相談・受診する目安
- 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応がおかしい
- 自力で水分を飲めない、嘔吐を繰り返す
- 尿が極端に少ない、半日近く尿が出ない
- 息苦しさ、胸痛、けいれん、歩けないほどの脱力がある
- 急な体重増加、むくみ、呼吸困難がある
- SGLT2阻害薬の服用中に、吐き気、腹痛、強い倦怠感、息苦しさがある
重い症状がある場合は、無理に飲ませず救急要請を検討してください。判断に迷う場合は、地域の救急相談窓口や医療機関へ連絡します。
薬局へ相談するときの伝え方
お薬手帳または薬の一覧を用意し、「いつから」「何が」「どの程度できないか」を具体的に伝えます。市販薬、健康食品、サプリメントも含めて伝えると、重複や相互作用を確認しやすくなります。薬を休んだ場合は、薬名、休んだ時刻、回数も伝えてください。
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よくある質問
脱水が心配なら利尿薬を止めてもよいですか?
自己判断で中止しないでください。心不全などでは中止によって症状が悪化する可能性があります。主治医から受けている体調不良時の指示に従い、指示がなければ早めに相談してください。
SGLT2阻害薬を飲んでいるときは水を多く飲めばよいですか?
必要な水分量は心臓や腎臓の状態で異なります。特に水分制限がある方は、多量の水分を自己判断で取らず、医療者に確認してください。
下痢が止まれば薬を再開できますか?
薬の種類、脱水の程度、食事と水分の回復状況によって異なります。再開時期も処方した医師や薬剤師へ確認してください。
まとめ
脱水時は、利尿薬、SGLT2阻害薬、下剤などの影響に注意が必要です。ただし、すべての薬を一律に中止するのは危険です。平常時にシックデイの対応を確認し、体調不良時は薬名、飲食量、尿量、体重、血圧、血糖などを伝えて早めに相談しましょう。
参考資料
- 日本糖尿病学会「薬剤等に関するRecommendation」
- 日本糖尿病学会「糖尿病患者の皆様へ:今一度シックデイ対策を」
- PMDA「患者向医薬品ガイド スーグラ錠」
- 厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」
情報確認日:2026年9月3日。この記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や個別の治療指示に代わるものではありません。薬の中止・変更・再開は、主治医または薬剤師へ確認してください。
脱水と重症化を見逃さないための確認
水分が取れるか、尿量、発汗、意識状態、持病と服用薬を確認してください。高齢者、乳幼児、利尿薬や一部の糖尿病薬などを使用中の方は影響を受けやすい場合があります。反応がおかしい、自力で飲めない、けいれんがある場合は救急対応が必要です。
相談時に伝えると役立つこと
- 症状の開始時期と変化
- 使用中の処方薬・市販薬・サプリメント
- 持病、アレルギー、副作用歴
- 妊娠・授乳、年齢、運転など生活上の条件
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の服薬判断は、添付文書と最新の診療情報を確認できる医師・薬剤師へご相談ください。

